家族も私のことを「しっかりしていて、気が強い」と見ていたようだ。ところが、結婚してみると、私は実家のことが気になって気になってしかたがなかった。名古屋で始めた新婚生活に不満があったわけではない。新鮮で、楽しい毎日だった。けれども、私はときどき、無性に実家に帰りたくなった。とくに「お姉ちゃんがいなくなって、お父さんやお母さん、しょんぼりしているよ」などと弟から聞かされると、どうにかなりそうなほど胸が騒ぎ、「すぐに里帰りしなくちゃ」などと思ってしまうのだ。当然、夫はいやな気持ちになったことだろう。これはまずいぞ。私は呟いた。結婚したというのに、こうも落ち着きに欠けるようでは、夫にだって申しわけない。そう思った私は、自分自身に「実家を切り捨てる」という難題を課した。切り捨てるといっても、なにも絶交しようとか、喧嘩しなくちゃとか、絶対会わないと決心したわけではない。ただ、意識の中でいったん実家を切り捨てるように自分に命令しないと、いつまでも里心を引きずったままでいるしかない。そんな状態では、どうやったって新しい家庭など築けはしない。自分ではうまく対処できなかったくせに、こんなことを言うのは気がひける。けれども、うまく対処できなかった過去を持つ身だからこそ、私は言いたい。結婚すると、あなたは夫の家族との間に新たな関係を築いていかなければならない。同時に、実家の家族との関係も、新しい局面を迎えていることも忘れずにいてほしい。おそらく、夫の家族との関係については、結婚前からそのむずかしさについて思いを巡らしていることだろう。ある程度、覚悟の上で結婚する人も多いに違いない。けれども、自分の家族との関係については、「大丈夫」と高をくくってはいないだろうか。実際には、夫の家族との関係よりむずかしいかもしれないというのに。濃い感情で結ばれた人たちは、それだけ互いを拘束する力が強いからだ。私もそれで苦しんだ。そして、苦しむ自分を実に意外だと思った。
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