「センス」がもっとも重視される世界

2011.06.25

ワコール中央研究所では、二〇年も前から、塚本社長の先見の明により、毎年五〇〇〜一〇○○人の女性のからだを、一人につき一五八箇所にわたって計測している。さらに、女性がどんな下着を求めているのか、どんなボディラインを望んでいるのか、セクシーな下着とはどんなもので、どうしてもつようになったのかなどなど、さまざまな意識調査をおこなっている。男性が女性をみるときの意識もフォロー調査し、製品開発のためのデータとして利用している。わが研究所にはこうして得たデータが山積みにされているわけだ。女性のからだとその動き、下着に対する意識、これらの一大情報バンクなのである。したがって逆に、それを生かさねばならない責任もあるわけだ。もともと私はコンマ以下のミリ単位の正確さが要求される機械工学が専門だった。それがファッション産業という「センス」がもっとも重視される世界にはいったのは、工場で生産にたずさわるためであったが、毎日、製品に触れていると、もう少し論理的にアプローチをする方法がありそうだということに気づいたのである。機械工学では「まあまあ」とか「だいたい」とかいうことは許されない。そんな体質のためか、ファッションの世界に「一定量的な」考えをもち込むということはひじょうに興味をそそられるテーマだったのである。ワコールに入社してはやくも二八年が経過したが、とくに中央研究所で仕事をするようになったこの一〇年間、ありとあらゆる角度から女性のからだと下着を研究してきたにもかかわらず、今さらながら、これほどデリケートなものはない、とつくづく思う。毎日が次から次へと生まれる謎解きと、新しい発見のくり返しだった。

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