「ノーネクタイは楽だ」これは2005年9月30日、官邸で記者団に対して漏らした小泉純一郎首相のコメントだ。週が明けた10月3日、今度はTVカメラを前にしたいわゆるぶら下がりで、「ネクタイは窮屈だ」とコメントしている。どちらも、環境省が提唱した「クールビズ」が終了したことについて求められたものだった。ネクタイを外し、上衣を脱ぎ、オフィスなど室内の冷房温皮設定を28皮にすることで、地球温暖化の原因となるガスの排出を抑え節電を促そうとするのがクールビズだ。2005年の夏、日本にはまさに「クールビズ狂想曲」とでもいうべき状況が現出した。ネクタイをきりりと締め、首を押さえてしまうとたしかに暑い。ならばネクタイを外すことで温暖化に抗しようという趣旨は理解できる。だが、永田町を中心に繰り広げられた光景は、どう見ても悲喜劇だった。クールビズがスタートした当初、閣僚たちの姿は目を覆いたくなるような酷い状態だった。それなりに頑張ったつもりなのだろうが、スーツとゴルフウェアとパジャマしか着たことのない人問には荷が重かったようだ。みな、ぎこちなかった。首相は沖縄の「かりゆしウェア」を着た。ところがしだいに、いつものスーツ姿からネクタイと上衣を除いただけのスタイルになっていった。ボタンダウンシャツのように、もともとスポーティーな装いとして誕生したシャツを着用するならばまだましで、クレリックシャツでクールビズ、という珍妙な姿もあった。聞こえてくるところでは、環境省内に設けられた検討委員会に名を列ねている有識者のなかから、「クレリックのシャツならネクタイを外しても恥ずかしくない」との提案があったという。クレリックシャツとは昼間のシャツで、しかもネクタイを締めてこそ完成するシャツなのに、だ。そうしたドレスコードを無視していては、いくらクールビズを叫んでも、全先進国から理解されるものとはなりにくい。
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